2011年9月15日木曜日

2011-09-14

  1. 米議会図書館では、資料保存担当者たちによる緊急事態チーム(ボランティアらしい)が、何かあった場合には、24時間いつでも、次の行動への起点となれるようにしているとのこと。
  2. 緊急事態計画については、日ごろの準備、短期の災害対応、長期的復旧、緩和(mitigation)といったサイクルで説明がされていた。具体的事例としては、ロブ氏も写真の復旧作業に関与した、2004年のハワイ大学での鉄砲水がとりあげられた。
  3. 脱線しますが、ハワイ大学の鉄砲水による図書館の被害と復旧に関しては、バゼル山本登紀子「楽園を襲った「ハロウィーンイブ鉄砲水」」情報管理. 48(6) http://t.co/xQaYTtb は必読かと。
  4. ハワイ大学では、夜8時の災害発生後、災害対応計画に基づいて、2時間後には建物外からの最初の被害状況のアセスメントが行われ、深夜には計画の実施を決定、朝には現場の確認開始、24時間後には冷凍トラックが現地に到着と、極めて迅速な対応が行なわれた、とのこと。
  5. 1週間で優先順位の高い資料の救出/搬出を完了し、2週間後には資料の救出が完了し、部分的に再開館、2ヶ月半後にはほぼ全面的に開館するところまで対応が進んだそう。ただし、救出した写真の処理には2年半、被災した地下スペースの再利用開始までには6年弱がかかっている。
  6. ハワイ大学のケースは、人的被害がほとんどなく、被災地域が限定的で、図書館の建物自体も、被災は地下に集中していたなど、インフラ面も被害が少なかったことが幸いした面もあるとのこと。それでも、コレクションの復旧には長い時間がかかることを、ロブ氏は強調していた。
  7. ちなみに、ハワイ大学のケースでも凍結して資料を一時的に保管する方法は有効だったとのこと。これで時間が稼げた、と話をされていた。あと、質疑でも話題になったのだけど、災害対応の専門会社と大学が契約していて、そこのサポートを(有償だけど)得られたのも大きかったらしい。
  8. ちなみに、ロブ氏の話に何度も出てきた、災害対応を専門にしている会社の一つはBelfor社 http://t.co/RGc2Tcv 。日本法人もあり http://t.co/q00bMAc 。ただ、米国でも、中小規模を含めた文化機関まで対象にしだしたのは最近のことらしい。
  9. ハワイ大学の経験を踏まえて、米西海岸とハワイの資料保存専門家の間のネットワークが構築されたとのこと。WESTPAS http://t.co/Fg5DDjP
  10. もう一つ、ハワイ大学の例で重要なのは予算の話。初期対応に関する費用は、州政府が負担し、国として災害地認定を受けると国から予算が出ると、それが州政府に支払われる(州が一時立て替えるような感じ?)という方式が取られているとのこと。
  11. 次にロブ氏がとりあげたのは、ハリケーン・カトリーナの事例。州をまたぐ大規模な災害でもあり、また、人命、インフラへのダメージも甚大だった。
  12. Tulane大学図書館でも災害対応の会社に依頼したものの、到着したのは一週間後、水の排出が終ったのがさらにその一週間後。その後、資料の救出を開始したものの、すぐに次のハリケーンが来て、作業は中断。優先度の高い資料の搬出は1ヶ月半後、全資料の搬出はその2週間後。
  13. 対応に時間がかかったこともあり、資料へのダメージが大きかったとのこと。現在は、ようやく資料の乾燥が終わり、書架に戻すのを待っている状況で、全ての作業が終了するのは2013年ということだった。いかに災害後、資料の復旧に時間がかかるのかがよくわかる。
  14. その他、小規模な施設の事例なども紹介されていたけど、ちょっと省略。
  15. ロブ氏が紹介していたカトリーナの教訓。災害時の緊急計画の実施は、インフラの被害に左右され、被害が大きい場合には、誰にもどうすることもできないということ。しかし、だとしても被害を最小限に抑えるためにできるだけの準備が必要なこと。そして出来る時に出来ることをする、ということ。
  16. カトリーナを経験から、国レベルでの災害対応体制も変わった。また、文化財災害対策委員会 Heritage Preservationの下に、タスクフォース http://t.co/LKYGUM1 が作られた。被災した機関が必要なリソースを得られるように協力する組織とのこと。
  17. あ、Tulane大学図書館のカトリーナ被害のページへのリンクはるの忘れてた。こちらです。 http://t.co/ZZ8yqal
  18. タスクフォースのページからは、被害を受けた機関が被害状況をレポートするためのフォームが用意してあったり、大きな災害についてはリンク集などもまとめられている。また、各州ごとに関連する窓口への連絡先のリストなども提供。 http://t.co/4n31FrJ
  19. もう一つ、AIC-CERTについてもロブ氏は紹介。 http://t.co/0P6PQhp 資料保存専門家たちのネットワークにより、文化資源保有機関の災害復旧を支援するチームを組織。(ページ見たら24時間電話受付中!)
  20. (余談)ちょっと省略してしまったけど、ロブ氏の話ぶりからすると、、米国の国全体としての災害対応体制の整備があって(その紹介も結構あった)、その下で、文化資源救出の仕組みが整備されてきている、ということだったような気がする。
  21. 最後に、ロブ氏の話は、フィレンツェ洪水の話にもどっていった。そこで世界から集まった資料保存専門家たちが泥にまみれながらの資料救出作業の中で認識したのは、文化資源を救うのは自分たちのためではなく、孫の世代、まだ生まれていない世代のためだ、ということだった、ということ。
  22. ロブ氏は、日本においても、困難な状況の中から、貴重な経験と、世界中の仲間たちとの連帯が生まれるだろうということを示唆しつつ、その経験を広く共有することを呼びかけていた。
  23. 質疑については、一部、これまでの話の中で適宜取り込んでしまったのだけど、緊急事態計画について若干補足。米国でもそういう計画を作るのは大変らしい。計画作成ツールなんかもあり。 http://t.co/k9q6MNa
  24. ただ、計画を作るだけではなくて、その過程で、関係者のコミュニケーションが取れることや、計画を維持していくための会合を定期的に持つことで、その関係を維持発展させていくことができることが重要だとロブ氏は指摘していた。計画はツール、という感じなのかも。
  25. という訳で、連投失礼しました。
  26. こんな長さならブログに書けよ、という話もあるな……
  27. 寝ます。
  28. @tmasao 書きっぱなしですみません。ありがとうございました。
  29. .@tmasao さんの「米議会図書館アンドリュー・ロブ氏講演会「災害からの図書館資料復旧」@国立国会図書館#saveMLAK」をお気に入りにしました。 http://t.co/q0EW3dV
  30. 昨夜の連投ツイート、英語版のタイトル書きわすれてた。"Recovery of Library Materials from a Major Disaster"
  31. ロブ氏の肩書き。Andrew Robb, Special Project Officer, Conservation Division, Library of Congress
  32. ちなみにロブ氏の専門は写真の保存・修復。『写真の手入れ,取り扱い,保存』2006年改訂を手がけた。 http://t.co/ctu1NqH 今日(9/14)の仙台での講演はそちらがテーマ。
  33. 今年もこれが出る季節になったか…。『毎日ムック 神田神保町古書街2012』 http://t.co/2Vq5Mmm
  34. iTunes Storeに、サイボーグ009の映画版(1966)が入ったのか。 http://t.co/qXRHVYi
  35. 近刊検索β見てたらこんなのあった。『植民地建築紀行』@近刊検索β http://t.co/PslHSHN via@hanmotocom
  36. これは今後の推移が気になる。 / HathiTrustと米国5大学が著作権侵害で著作者団体等から訴えられる | カレントアウェアネス・ポータル http://t.co/L9yqDPL

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